保険会社から交通事故の治療費の支払を打ち切られた場合、弁護士はどのように対処するのか
交通事故で受傷して、まだ治療中であるのに、保険会社から交通事故の治療費の支払を打ち切られた場合、どうしたらよいのか不安に駆られることでしょう。
このような場合、主治医の判断も必要とはいえ、保険会社が相手だけに、法律的な判断も必要になるため、弁護士に相談することが望ましいといえるのです。
では、保険会社から交通事故の治療費の支払を打ち切られた場合、弁護士はどのように対処するのでしょうか。
弁護士は、主治医の意見を聞いた上、治療の必要があれば、被害者に有利な結果が得られるように、保険会社との交渉を進め、一方、被害者が治療を望めば、保険の利用等についても適切なアドバイスをします。また、被害者が治療費の支払の打切りを受け入れる場合も、弁護士は、被害者により有利な手続を進めていきます。
以下においては、保険会社が治療費の支払を打ち切る理由、治療費の支払を打ち切られた後の被害者の対応に触れた上、保険会社から交通事故の治療費の支払を打ち切られた場合、弁護士はどのように対処するのかについて、説明することとします。
保険会社が治療費の支払を打ち切る理由
交通事故に遭った場合、加害者の保険会社は治療費や慰謝料等を被害者に支払います。しかし、保険会社は、被害者の受傷の程度から見て、事故からそれ相応の期間が経過すれば、治療の必要はないものと判断し、治療費の支払を打ち切ることが多いものです。
保険会社は、営利を目的とする以上、被害者の受傷に見合う期間を超えた治療費まで負担する必要はないというわけです。
治療費の支払を打ち切られた後の被害者の対応
被害者は、保険会社から治療費の支払を打ち切られたとしても、主治医が治療の必要があると診断している限り、治療を継続せざるを得ません。
とはいえ、保険会社から治療費の支払を打ち切られれば、それ以降の治療費は被害者が支払うことになります。
その場合、被害者は、人身傷害補償保険が使えたり、労災保険の利用により治療費の捻出ができればともかく、そうでない場合には、費用を抑えるために、健康保険を利用することになります。健康保険を利用した場合、被害者は、治療費の3割を負担することになります。しかし、被害者が、支払った3割の部分を保険会社に請求したとしても、保険会社が訴訟外でその請求に応じるとは思えません。そのような事態にならないためにも、保険会社から治療費の支払を打ち切られた場合には、被害者は、保険の利用等について、弁護士に相談する必要があるのです。
弁護士はどのように対処するのか
治療の必要がある場合
弁護士は、保険会社から治療費の支払を打ち切られた旨の相談を、被害者から受けた場合、被害者になお治療の必要があるかどうかを確認するため、被害者を通じて、あるいは電話や面接をして直接、「①現在の症状は。➁現在、どのような治療を行っているか。効果は上がっているか。➂治療が終わる適切な時期はいつごろか。④現在の症状で仕事への支障はあるか。いつごろ職場復帰ができるか。」などについて、主治医から意見を聞きます。
弁護士は、その結果を踏まえ、治療費の支払の打切りが適切かどうかについても、法律のプロの視点から検討し、なお治療の必要があると判断される場合には、その旨が記載された診断書を主治医に作成してもらい、意見書とともに保険会社に提出して、治療費の支払の継続を交渉することになります。治療の必要性の度合いにもよりますが、弁護士は、保険会社との交渉により、治療費の支払期間を延長してもらえる可能性もあります。
被害者が治療の継続を望む場合
弁護士は、保険会社から治療費の支払を打ち切られても、被害者が治療の継続を望む場合には、人身傷害補償保険や労災保険の利用を検討することになります。しかし、その利用が難しい場合には、弁護士は、被害者に対し、治療が実費負担になるリスクがあることを十分に説明した上で、費用を抑えるために、健康保険に切り替えて受診するようにアドバイスします。
なお、被害者が、健康保険を利用して治療を継続するためには、健康保険組合等に「第三者の行為による負傷」である旨の書面やその付属資料を提出する必要があります。
しかし、保険会社が治療費の支払を打ち切るのは、「治療の必要性がない」あるいは「症状固定(治療を続けても、それ以上の症状の改善が望めない状態)」と判断したためですから、健康保険を利用して支払った治療費については、最終的に、被害者あるいは保険会社のどちらが負担するのかは、訴訟等で争うことになります。弁護士は、訴訟等に備え、上記の診断書等のほか、治療費の領収書や診療明細書が、治療の継続性や相当性を立証する際の重要な証拠になる旨、あらかじめ、それらの保管方も含め、被害者に注意しておく必要があります。
治療費の支払の打切りを受け入れる場合
弁護士は、被害者と十分に話し合った末、被害者が、治療費の支払の打切りを受け入れることになった場合には、損害賠償額が確定したものとして、保険会社と速やかに示談交渉を進めていきます。また、症状固定時に残存する症状があれば、後遺障害等級認定の申請手続を行うことになりますが、弁護士は、被害者と相談の上、被害者請求(直接自賠責保険に自賠法16条に基づき請求する方法)か事前認定手続(任意保険会社を介して行う方法)か、被害者に有利な手続を選択することになります。
まとめ
保険会社から交通事故の治療費の支払を打ち切られた場合、弁護士は、主治医から意見を聞いた上、治療の必要があれば、被害者に有利な結果が得られるように、保険会社との交渉を進め、一方、被害者が治療の継続を望めば、保険の利用等についても適切なアドバイスをします。そして、被害者が治療費の支払の打切りを受け入れる場合には、弁護士は、保険会社と速やかに示談交渉を進め、また、後遺障害等級認定の申請手続についても、被害者により有利な手続を進めていきます。