交通事故で家屋や自動車の改造等を余儀なくされた場合、その費用を請求できるのか

代表弁護士 津田 岳宏 (つだ たかひろ)

交通事故で後遺障害が残った場合、日常生活上の困難を解消するため、住む家屋や利用する自動車の改造等を余儀なくされる場合があります。

では、交通事故で家屋や自動車の改造等を余儀なくされた場合、その費用を請求できるのでしょうか。

家屋や自動車の改造費等については、被害者の症状の内容・程度に応じて、必要かつ相当な範囲で損害と認められていますから、それに要した費用を請求できるといえます。

家屋の改造費等

家屋改造等にかかる費用は、被害者の受傷の内容、後遺障害の内容・程度に応じて、必要かつ相当な範囲で損害と認められています。後遺障害の具体的な内容・程度等とともに、家屋改造の工事箇所ごとの工事内容、費用を含む明細、被害者の生活状況、現状での不都合等の具体的な主張立証が必要となります。

そこで、家屋の改造費等に関し、改造、新築や新規購入、転居や家賃差額、家族の利便性の場合に分けて、検討することとします。

改造の場合

事故により重度の後遺障害が残り、不自由な生活を余儀なくされたような場合、日常生活上の困難を解消するために、トイレや浴室の手すりの設置、移動に車椅子を要する場合の段差の解消等の工事をすることが必要となります。

①トイレや浴室等の手すり設置費用18万円余は全額、自宅バリアフリー工事は家族の利便性向上を考慮し70%の211万円余、設計監理費は必要性相当性を有する工事費用の割合を考慮し30%の22万円余、介護テーブル購入費5250円余は全額、合計額252万円余を認めた事例(東京地判平28.1.22交民49・1・55(杖歩行、歩行不安定、しゃがむ動作が困難となった左股関節機能障害・10級11号の76歳女性家事従事者の事案)、➁住宅改造費(リハビリ用スペースを確保し車椅子での移動を可能とするための洋室15畳・トイレ・浴室等の改修工事費、各室段差工事費、スロープ・手すり設置工事費等)は被害者の生活及びその介護にとり不可欠なものであり、家族による便益享受はあくまでも副次的に生ずるとして、請求どおり1051万円余を認めた事例(前橋地高崎支判平16.9.17自保ジ1562・3[高次脳機能障害、四肢体幹機能障害・1級3号の21歳男子大学生の事案]))がその例です。

新築や新規購入の場合

既存の自宅の改造等ではなく、新築や新規に物件を購入し改造工事を行う場合は、構造上自宅の改造が困難であるなどの事情が必要となります。

①旧居宅が狭く、車椅子移動用の改造を加えると同人と家族が居住することは不可能であるから広い家屋を購入する必要が生じたとして、マンション購入費用6480万円の10%648万円と新居のバリアフリー工事費160万円余の合計808万円余を認めた事例(東京地判平15.2.27交民36・1・262[上肢機能はほぼ正常だが排泄障害を伴う・1級3号の57歳男性の事案])、➁設計士が、リフォーム工事はかえってコストがかかってしまうことを前提に介護用居宅を設計していること等から、278万円余のリフォーム費で足りるとの加害者側の主張を排斥し、自宅敷地内に建つ2棟の建物のうち、老朽化の進んだ木造2階建建物(1階28.04平米、2階27.56平米)を取り壊し、木造合金メッキ鋼板ぶき平屋建の建物(31.38平米)を新築するために支出した1628万円余を認めた事例(神戸地判平29.3.30交民50・2・369[遷延性意識障害四肢麻痺・別表第1の1級1号の35歳男性の事案])がその例です。

転居や家賃差額の場合

自宅が賃貸物件の場合、改造は困難なことも多いため、バリアフリー住居等への転居の必要性が認められれば、転居費用や家賃差額が損害となります。

〇従前の賃貸マンションからバリアフリーの賃貸マンションへの転居費用20万円余、賃料差額のうち月額3万円を平均余命まで79年間704万円を認めた事例(東京地判平28.2.25交民49・1・255[四肢痙性麻痺等・別表第1の1級1号の7歳女児の事案])がその例です。

家族の利便性の場合

家屋改造等により、同居の家族が利便を得ているとして、一定程度減額する裁判例が多いのですが、他方で、家族の利便性の向上は反射的利益にすぎないとして減額を否定する裁判例もあります。

自動車の改造費等

自動車改造等にかかる費用は、被害者の受傷の内容、後遺障害の内容・程度に応じて、必要な範囲で損害と認められています。

後遺障害の具体的な内容・程度等とともに、自動車改造の内容、費用を含む明細、自動車の仕様の内容、被害者の生活状況、現状での不都合等の具体的な主張立証が必要となります。自動車の改造費等に関し、改造と将来の買替の場合に分けて、検討することとします。

改造の場合

重度の後遺障害が残ったような場合、日常生活上の困難を解消するために、自動車の改造が必要となります。自動車改造費は、自動車自体は事故と無関係に所有されることが多いため、福祉車両の購入費用全額ではなく、標準仕様との差額(改造費用)や購入費用の一定割合で認定することが多いとされます。

①車椅子に乗車した状態で乗降できる福祉車両購入費と同型の一般車両購入費との差額95万円、6年ごとに6回分、231万円余を認めた事例(東京地判平16.5.31交民37・3・675[躯幹失調、四肢不完全麻痺等・併合1級の45歳兼業主婦の事案]) 、➁事故後に購入した車椅子仕様車の本体価格308万円余と、事故前に保有していた車両の新車本体価格163万円余の差額145万円について、耐用年数6年、平均余命まで540万円余を認めた事例(大阪地判平26.12.8交民47・6・1475[第5頸髄損傷により両下肢を動かせず持続導尿が必要・別表第1の1級1号の23歳男子大学生の事案])がその例です。

将来の買替の場合

一定期間での買替が必要な自動車については、耐用年数に応じ、平均余命までの各買替時の購入費用を、中間利息を控除した現価で算出します。

〇介護車購入費359万円余のうち60%を相当因果関係ある損害とし、7年ごとに9回の買替721万円余を認めた事例(大阪地判平19.7.26自保ジ1721・8[遷延性意識障害、てんかん様の発作・1級1号の8歳男児の事案])がその例です。

まとめ

交通事故で後遺障害が残ってしまった場合、住む家屋や利用する自動車の改造等が必要になります。家屋や自動車の改造費等については、被害者の症状の内容・程度に応じて、必要な範囲で損害と認められていますから、それに要した費用を請求できます。

しかし、そのためには、それぞれの損害についての適確な立証が必要です。

家屋や自動車の改造費等の請求をお考えの方は、是非当事務所にご相談ください。

代表弁護士 津田岳宏(つだたかひろ)/昭和54年生/京都女子大学付属小学校卒業/東大寺学園中・高等学校卒業/京都大学経済学部卒業/平成19年9月弁護士登録/平成26年6月京都グリーン法律事務所を設立

賠償金が増額出来なければ報酬は一切頂きません

着手金無料/完全成功報酬/時間外・土日祝対応

京都・滋賀/全域対応

交通事故の無料相談はこちら

0120-543-079
受付時間平日 9:00 - 22:00 / 土日祝夜間対応可