失業者や学生の休業損害は認められるのか

代表弁護士 津田 岳宏 (つだ たかひろ)

交通事故に遭い、入院や通院を余儀なくされ、失業者については就職の予定があったのに就職できなくなったり、学生についてはアルバイト収入を絶たれたり、就職時期が遅れたりすることがあります。

では、失業者や学生の休業損害は認められるのでしょうか。休業損害は、原則として、1日当たりの基礎収入に、休業期間を乗ずることで算定されます。

以下においては、休業損害、休業損害の算定方法、失業者や学生の基礎収入、休業期間などを概観しながら、失業者や学生の休業損害は認められるのかについて、説明することとします。

休業損害

休業損害とは、被害者が交通事故による受傷のために休業し、又は十分に就労できなかったために、傷害の治癒ないし症状固定までの間に、得ることができたはずの収入ないし利益を得られなかったことによる損害をいいます。

休業損害の算定方法

休業損害は、原則として、「1日当たりの基礎収入×休業期間」で算定されます。 

失業者や学生の基礎収入

事故前に現に労働の対価である収入を得ていない失業者や学生に対しては、原則として、休業損害を認めることはできません。

しかし、下記のような場合には、失業者や学生についても、休業損害が認められます。

失業者の場合

就労の意思と能力があり、治療が長期にわたる場合で、事故がなければ治療期間中に就労の蓋然性が高いときは、休業損害が認められています。

この場合の基礎収入は、失業前の収入、年齢、技能・資格、予測される将来の職業等を参考として、再就職により得られたであろう賃金の額となりますが、控えめな認定とならざるを得ないため、賃金センサスの年齢別の平均賃金よりも低額となることが多いとされます。

なお、「就労の意思」については、求職活動を裏付ける履歴書、職務経歴書、エントリー会社からの書面や被害者の陳述書など、「就労の能力」については、過去に就労の実績があることを裏付ける雇用契約書、労働条件通知書やその当時の収入金額が分かる資料(源泉徴収票、給与明細書等)など、「就労の蓋然性」については、就職予定を裏付ける内定通知書や雇用契約関連の書面などが、立証資料になります。

就職が決まっている場合

休業損害を認めた裁判例には、①事故直前に就職先が内定していた被害者(男性、30歳)が、その会社から年俸等の内諾を得ていた場合、年収を基礎に、事故日から61日間は100%、その後3か月間は60%、症状固定まで3か月間は30%の分を認めた事例(大阪地判平17.10.12交民38・5・1406)、➁職業訓練を受け、障害者雇用枠で就職予定であった被害者(男性、39歳)が、事故により就職する機会を逃すとともに歩行障害が発症して就労できなくなった場合、就職予定先で得られたであろう賃金を基礎に、症状固定まで52か月分を認めた事例(東京地判平23.2.3自保ジ1870・119)、➂前職を定年で退職後、事故前に雇用契約を締結していた被害者(男性、61歳)が、事故後に別の会社に再就職した場合、雇用契約の月給額を基礎に、雇用契約の就労開始予定時から再就職した日の前日までの分を認めた事例(名古屋地判平23.5.20自保ジ1853・28)などがあります。

就労の蓋然性がある場合

休業損害を認めた裁判例には、①元大工(男性、62歳)が、大工として稼働する意思と能力があり、専門技術性から稼働先が見つかる可能性があった場合、賃金センサス男性学歴計60歳から64歳平均の8割を基礎に、症状固定まで323日間分を認めた事例(札幌地判平13.11.29自保ジ1462・6)、➁被害者(男性、62歳)が、約1年半前に運送業を廃業後、具体的な就職話があり健康で就業意欲もあり、事故から3か月後には運転手の仕事に就く蓋然性が高かった場合、賃金センサス男性学歴計60歳から64歳平均の7割を基礎に、そこから症状固定までの570日間分を認めた事例(名古屋地判平18.3.17自保ジ1650・14)、➂被害者(男性、56歳)が、事故の直前まで再就職に向けてハローワークに通い面接に参加するなど勤労意欲があった場合、直前の会社での月額賃金を基礎に、症状固定日までの417日から再就職までに要したであろう90日を控除した327日分を認めた事例(さいたま地判平25.12.10交民46・6・1558)などがあります。

学生の場合

学生が、パートやアルバイトなどで継続的な収入を得ており、実際に減収になった場合、休業損害が認められます。この場合の基礎収入は、パートやアルバイト先の休業損害証明書によることになります。

また、学生が、受傷に起因する留年や治療の長期化により就職時期が遅れた場合、休業損害が認められます。就職遅延の場合の基礎収入は、就職が内定していればその給与額、そうでない場合は賃金センサスの年齢別(22歳で就職予定であった大学生であれば20~24歳)の平均賃金となります。

アルバイトの場合

休業損害を認めた裁判例には、大学生(男性、20歳)が、アルバイト継続の蓋然性が高かった場合、事故前日までの102日間の実収入を基礎に、症状固定まで384日間分を認めた事例(名古屋地判平23.2.18交民44・1・230)などがあります。

就職遅延の場合

休業損害を認めた裁判例には、①短大生(女性、20歳)が、事故後就職活動が行えなかったことなどから1年間の就職の遅れが生じた場合、賃金センサス女性短大卒20歳から24歳平均を基礎に、1年分を認めた事例(横浜地判平11.7.28自保ジ1335・2)、➁大学生(男性、21歳)が、事故により留年し1年半就職遅れが生じた場合、賃金センサス男性大学卒20歳から24歳平均を基礎に、就職遅れの期間分を認めた(東京地判平12.12.12交民33・6・1996)、➂就職が内定していた大学院生(男性、27歳)が、事故により就職内定が取り消され症状固定まで就業できなかった場合、就職内定先の給与推定額を基礎に、就職予定日から症状固定まで2年6か月余の分を認めた事例(名古屋地判平14.9.20交民35・5・1225)などがあります。

休業期間

賠償の対象となる休業期間は、原則として、事故による傷害が治癒し又は症状が固定した時期までの間に、被害者が実際に休んだ日数が一応の基準となります。休業の必要性ないしその程度の立証は、診断書によるのが通常です。

まとめ

交通事故に遭い、入院や通院を余儀なくされた場合、就職できたはずの失業者や、アルバイト収入を絶たれたり、就職遅延となった学生には、休業損害が認められます。

このような失業者や学生の休業損害は、原則として、1日当たりの基礎収入に、休業期間を乗ずることで算定されます。

しかし、失業者や学生の場合、休業損害の基礎収入の算定には困難を伴うことも少なくありません。

交通事故に遭い、休業損害の請求をお考えの失業者や学生の方は、是非当事務所にご相談ください。

代表弁護士 津田岳宏(つだたかひろ)/昭和54年生/京都女子大学付属小学校卒業/東大寺学園中・高等学校卒業/京都大学経済学部卒業/平成19年9月弁護士登録/平成26年6月京都グリーン法律事務所を設立

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