低髄液圧症候群(脳脊髄液減少症)の症状と後遺障害
低髄液圧症候群(ていずいえきあつしょうこうぐん)は脳脊髄液減少症(のうせきずいえきげんしょうしょう)とも呼ばれ、交通事故の被害により発症する場合があるとされています。
むち打ち症との関連性も取りざたされており、その原因は未だ完全に解明されていません。髄液という液体が減少することにより、めまい・頭痛・倦怠感などを引き起こすとされており、起き上がった際に頭痛が増すのが特徴です。
今回は低髄液圧症候群の症状や診断方法、後遺障害等級認定について解説します。
低脊髄液圧症(脳脊髄液減少症)はどんな症状が出るのか
低脊髄液圧症の症状で特徴的なのは、起立性頭痛です。起立性頭痛は起き上がるとひどくなる頭痛で、その他の症状に首の痛み、めまい、吐き気、疲れやすい、耳鳴り、などがあります。
低髄液圧症候群(脳脊髄液減少症)とむち打ちの違い
むち打ち症により低髄液圧症候群を引き起こすことが主張されたのは、つい最近のことです。交通事故の被害者が一般的なむち打ち症の症状ではなく、低髄液圧症候群の症状を訴えることは以前からありましたが、医学的な原因がわからず精神的な原因とされていたこともあります。
むち打ち症の後遺症として低髄液圧症候群を認める判例はありますが、否定する判例も多くあります。診断や事故との因果関係の証明が、依然として難しい病気といえるでしょう。
また、低髄液圧症候群を、むち打ち症の後遺症とすること自体を疑問視する見方もあります。非常に難しい病例であるといえます。
低髄液圧症候群(脳脊髄液減少症)の検査と診断方法
低髄液圧症候群の検査は問診やMRIを用います。問診により低髄液圧症候群の疑いがあれば、実際に髄液が漏れ出しているか否かを画像で診断できます。
問診で症状をきちんと伝えることが大事
低髄液圧症候群が疑われる場合、問診で以下のような症状がないか確認します。特徴的な症状については確実に伝えましょう。また、症状が出た時期や、体位を変えたことによる症状の変化も重要なポイントです。
- 起立性の頭痛
- めまい
- 全身倦怠感
- 首周辺の痛み
- 視力低下
- 吐き気
- 耳鳴り
- 異常発汗
低髄液圧症候群の症状はさまざまですので、上記に当てはまらない自律神経症状などが出る場合もあります。
画像診断
画像診断は厚生労働省のガイドラインでも脳脊髄液減少症の診断基準とされており、後遺障害等級認定の決め手となり得ます。
脊髄MRI・MRミエログラフィー
脊髄MRIは造影剤により髄液の減少を画像でとらえられる可能性があります。MRミエログラフィーは造影剤を使用しませんが、体内に造影剤を直接投与して行う方法もあります。どちらも脊髄液が漏れ出しているか、診断ができます。
RI脳槽シンチグラフィー
RI脳槽シンチグラフィーでは、放射性同位元素(RI)を体内に直接投与し、RIから発せられる放射線を撮影することで髄液の漏れを見つけます。
過去の判例でも、RI脳槽シンチグラフィーにより画像で髄液の漏れが確認できたことで後遺障害等級に認定されたことがあります。
CTミエログラフィー
造影剤を用い、CTで全身を撮影することで、髄液の漏れを見つけます。
低髄液圧症候群(脳脊髄液減少症)の治療方法
低髄液圧症候群の治療方法として、保存治療とブラッドパッチ治療があります。保存治療は手術を行わずに安静などにより、症状の改善を促します。
ブラッドパッチ治療は、とても新しいものですが有効性や安全性の高い方法として治療法が確立されており、平成28年に保険適用されました。
低髄液圧症候群(脳脊髄液減少症)の後遺障害等級
低髄液圧症候群の後遺障害等級の認定は、依然として難しいものです。後遺障害として認められたとしても14級、ということがほとんどです。
しかし、専門の弁護士のサポートを受けることで、適切な後遺障害等級に認定される可能性が高まります。
<低髄液圧症候群で認められる可能性のある後遺障害等級> | |
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第9級10号 | 神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの |
第12級13号 | 局部にがん固な神経症状を残すもの |
第14級9号 | 局部に神経症状を残すもの |
当事務所には、一般の事務所には存在しない顧問医も存在します。低髄液圧症候群の問題でお困りの方は、お気軽にご相談下さい。