過失割合の修正要素にはどのようなものがあるのか

代表弁護士 津田 岳宏 (つだ たかひろ)

実務では、「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準〔全訂5版〕」(別冊判例タイムズ38号)を参考にして、過失割合が判断されるのが一般的です。
では、過失割合の修正要素にはどのようなものがあるのでしょうか。

上記書籍では、事故の態様ごとに、基本となる過失割合とその過失割合の修正要素を掲載していますので、過失割合の修正要素にはどのようなものがあるのかについて、主なものを中心に、説明することとします。

なお、修正要素には当事者に不利な加算要素と有利な減算要素があり、下記の過失割合の修正要素(加算要素、減算要素)の括弧内の数字は、原則的な場合につき、パーセントを表しています。数個の修正要素がある場合、数値を重畳的にするか限定的にするかは、事故の態様によります。

修正要素として用いられる用語の意味

四輪車・単車の場合

著しい過失 脇見運転等著しい前方不注視、著しいハンドル・ブレーキ操作不適切、携帯電話等の無線通話装置を通話のため使用したり、画像を注視したりしながら運転すること、おおむね時速15㎞以上30㎞未満の速度違反(高速道路を除く)、酒気帯び運転、一般道路におけるヘルメット不着用(単車のみ)等
重過失 酒酔い運転、居眠り運転、無免許運転、おおむね時速30㎞以上の速度違反(高速道路を除く)、過労、病気及び薬物の影響その他の理由により、正常な運転ができないおそれがある場合、高速道路におけるヘルメット不着用(単車のみ)、ことさらに危険な体勢での運転(単車のみ)等

自転車の場合

著しい過失 酒気帯び運転、2人乗り、無灯火、並進、傘を差すなどしてされた片手運転、脇見運転等著しい前方不注視、携帯電話等の無線通話装置を通話のため使用したり、画像を注視したりしながら運転すること、右側通行等
重過失 酒酔い運転、いわゆる「ピスト」等の制動装置不良等

その他

児童とは6歳以上13歳未満の者、幼児とは6歳未満の者、高齢者とはおおむね65歳以上の者、著しい過失とは事故態様ごとに通常想定されている程度を超えるような過失、重過失とは著しい過失よりも更に重い、故意に比肩する重大な過失をいいます。

修正要素の内容

歩行者と四輪車・単車との事故

歩行者の修正要素
加算要素 幹線道路における横断歩道上の事故(5)、その他の事故(10)
夜間(5)
直前直後横断・佇立・後退、急な飛び出し、ふらふら歩きにおける横断歩道上の事故(5)、その他の事故(10)
横断禁止の規制あり(5~10)
路上横臥者の幹線道路における事故は、道路の幅員や交通量等の状況に応じて(10~20)
バックブザー等(警告)のある後退車による事故(10)
減算要素 四輪車・単車の著しい過失(10)・重過失(20)
路上横臥者の住宅街・商店街における事故は、酔客の予想される飲食店街(20)、それ以外の場所(10~20)

歩行者と自転車との事故

歩行者の修正要素
加算要素 幹線道路における横断歩道上の事故(5)、その他の事故(10)
直前直後横断・佇立・後退、急な飛び出し、ふらふら歩きにおける横断歩道上や歩道上の事故(5)、その他の事故(10)

歩行者と直進・右左折の四輪車・単車・自転車との横断歩道上の事故

歩行者の修正要素

横断歩道上

 

加算要素 幹線道路(5)、夜間(5[自転車を除く])、直前直後横断・佇立・後退(5~10)
減算要素 住宅街・商店街等(5~10)、児童・高齢者(5~10)、幼児・身体障害者等(5~20)、集団横断(5~10)、車の著しい過失(5~10)、車の重過失(10~20)、歩車道の区別なし(5~10)

なし

横断歩道上

 

加算要素 幹線道路(5)、夜間(5[自転車を除く])、直前直後横断・佇立・後退(5~15)
減算要素 住宅街・商店街(5)、児童・高齢者(5)、幼児・身体障害者等(10)、集団横断(5)、車の著しい過失(5)、車の重過失(10)、歩車道の区別なし(5)

交差点における直進の四輪車同士の事故

下記の括弧内の車の修正要素
信号機あり 青信号車と赤信号車との事故(青信号車) 加算要素

 

青信号車に何らかの過失あり又は赤信号車の明らかな先入(10)、青信号車の著しい過失(10)・重過失(20)
減算要素 赤信号車の著しい過失(5)・重過失(10)
黄信号車と赤信号車との事故(黄信号車) 加算要素

 

黄信号車の赤信号直前の進入(10)、衝突時赤信号車の信号青(20)、黄信号車の著しい過失(10)・重過失(15)
減算要素 赤信号車の著しい過失(5)・重過失(10)
赤信号車と赤信号車との事故(当赤信号車) 加算要素 相手赤信号車の明らかな先入(10)、当赤信号車の著しい過失(5)・重過失(10)
減算要素 当赤信号車の明らかな先入(10)、相手赤信号車の著しい過失(5)・重過失(10)
信号機なし 同幅員(左方車) 加算要素 左方車の著しい過失(10)・重過失(20)
減算要素 見通しがきく交差点(10)、夜間(5)、右方車の著しい過失(10)・重過失(20)
一方が明ら

かに広い道

路(広路車)

加算要素

 

狭路車の明らかな先入(10)、広路車の著しい過失(10)・重過失(20)
減算要素

 

見通しがきく交差点(10)、狭路車の著しい過失(10)・重過失(20)
一方に一時

停止の規制(規制なし車)

加算要素 規制なし車の著しい過失(10)・重過失(20)
減算要素 規制あり車の著しい過失(10)・重過失(20)
一方が優先道路(優先車) 加算要素

 

劣後車の明らかな先入(10)、優先車の著しい過失(15)・重過失(25)
減算要素 劣後車の著しい過失(10)・重過失(15)

四輪車と四輪車・単車との事故、自転車と四輪車・単車との事故

下記の括弧内の車又は違反車の修正要素(5~20)
加算要素 幹線道路(路外車)、見通しがきく交差点(右方車[自転車を除く])、大型車(四輪車)、右折禁止違反(右折車[自転車を除く])、徐行なし(右左折車)、減速せず、狭路車の明らかな先入(広路車)、早回り右折・大回り右折・直近右折(右折車)、右折車の通行妨害となる交差点進入(直進車[自転車を除く])、夜間(右方の大型車)、右側通行(自転車)、時速15㎞以上30㎞未満の速度違反、時速30㎞以上の速度違反、その他の著しい過失、その他の重過失
減算要素 一時停止後進入(規制あり車)、既右折(右折車)、合図なし(運転者に合図違反がある場合の相手車)、四輪車の無灯火(自転車)
加算・減算要素 著しい過失・重過失(双方の車)

高速道路上の事故

下記の違反車の修正要素
加算要素 時速20㎞以上40㎞未満の速度違反(10)、時速40㎞以上の速度違反(20)
合流地点の手前で無理な急加速(10~20)
本線車線上にはみ出して駐停車(20)

まとめ

交通事故に遭った場合、その過失割合を巡って、示談交渉や裁判で争いが生じやすいものです。しかも、事故の態様ごとに、基本となる過失割合とその過失割合の修正要素があります。交通事故に遭い、過失割合のことでお悩みの方は、是非当事務所にご相談ください。

代表弁護士 津田岳宏(つだたかひろ)/昭和54年生/京都女子大学付属小学校卒業/東大寺学園中・高等学校卒業/京都大学経済学部卒業/平成19年9月弁護士登録/平成26年6月京都グリーン法律事務所を設立

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