交通事故の治療においては整骨院よりも整形外科を優先すべき

代表弁護士 津田 岳宏 (つだ たかひろ)

交通事故で頸椎捻挫や腰椎捻挫等の傷害を負って治療をおこなう場合、原則的には、整骨院より整形外科への通院を優先すべきです。

その第一の理由は、交通事故による傷害の診断や治療についての判断は医師の専権事項である点です。人身事故の警察への届出や人身損害としての治療費等の請求のためには診断書が必要ですし、また、症状固定後に後遺障害を申請する場合には後遺障害診断書が必要です。

これらの診断書作成やその前提となる診断や治療をできるのは医師に限られており、整骨院で施術を行う柔道整復師にはその権限はありません。

以下、治療関係費の因果関係、柔道整復師の施術、整形外科の診療行為などを概観しながら、整形外科と整骨院との違いを説明していきます。

治療関係費の因果関係

交通事故事件の治療関係費は、治療費、入院費等のほか、診断書作成費等の文書料があります。治療関係費の範囲は、被害者が交通事故により受けた傷害の具体的な内容・程度に照らして、症状が固定するまでに行われた「必要かつ相当な治療行為」として相当な因果関係が認められる費用と考えられています。

柔道整復師(整骨院、接骨院)の施術費についても、症状固定までに行われた「必要かつ相当な施術行為」の費用であると認められる場合には、交通事故の治療関係費に該当する損害と認められ、当該施術費を請求できると考えられています。

もっとも、柔道整復師の施術費について、福岡高判平30.9.28(自保ジ2036・92)は「医師から接骨院への通院の指示や同意があったとは認められないこと、接骨院での施術を受けなければ改善しない症状であったとは認め難く、接骨院での施術の必要性が認められないことを理由に、施術費について、事故と相当因果関係のある損害とは認められない」とし、また、東京地判平14.2.22(判時1791・81)は「医師の治療については、特段の事情のない限り、その治療の必要性があり、かつ、その治療内容が合理的で相当なものであると推定されるのに対し、柔道整復師等の施術については、医師による治療の一環として行われた場合でない限り、当然には、その施術による費用を加害者に負担すべき損害と解することはできない」としています。

とくに近年では、整骨院・接骨院の過剰診療が問題となる事件があったことにより、施術の必要性・相当性が争われる裁判が増え、裁判所も、医師の指示ないし同意のない整骨院の施術については、必要性・相当性の判断(相当因果関係の判断)を厳しくする傾向にあります。

柔道整復師の施術

柔道整復師法17条は、「柔道整復師は、医師の同意を得た場合のほか、脱臼又は骨折の患部に施術をしてはならない。ただし、応急手当をする場合は、この限りでない。」と規定しています。

この17条の趣旨は、「患者の人体に危害が生じるのを防止すること、柔道整復師の施術は医師の行う医業に対する補助的なものであるため、原則として医師の同意がない限り、柔道整復師は脱臼又は骨折の患部に施術はできないこと、ただし、例外的に、医師の診断を受けるまで脱臼又は骨折を放置すると、生命又は身体に重大な危害を来すおそれのある場合は、柔道整復師も、その業務の範囲内において、患部を一応整復する行為としてのいわゆる応急手当ができるとした」と考えられています。

すなわち、柔道整復師が行えるのは、打撲、捻挫と応急の手当としての脱臼、骨折、若しくは医師の同意を得た脱臼、骨折の施術に限定され、手術・投薬はできず、X線検査、MRI検査や診断もできないということになります。

なお、柔道整復師の施術に関しては、健康保険も限定的とはいえ承認しています(厚生労働省HP「柔道整復師等の施術にかかる療養費の取扱いについて」参照)。同HPは、「柔道整復師の施術を受けられる方へ」とし、「保険を使えるのはどんなとき」として「整骨院や接骨院で骨折、脱臼、打撲及び捻挫(いわゆる肉ばなれを含む。)の施術を受けた場合に保険の対象になります。

なお、骨折及び脱臼については、緊急の場合を除き、あらかじめ医師の同意を得ることが必要です。」としています。自賠責保険では、「柔道整復師の施術費用は、必要かつ妥当な実費とする。」としています。「医師の指示ないし同意のない施術については治療関係費として認められない」とされる場合もあります(上記各裁判例参照)。

整形外科の診療行為

整形外科では、医師が診察、治療に当たりますので、事故直後どのような症状であったのかを記録に残すことができ、保険の取扱いも確実で、X線検査、MRI検査、投薬、必要ならば手術も可能であり、医学的に専門的なサポートを受けることができます

一般的に、外傷に起因する捻挫や挫傷等による症状は、追突や衝突等による衝撃で筋肉や靱帯等の軟部組織が損傷を受けた際に発症するものであることから、受傷直後が最も重篤であり、その後、時間の経過に伴い、損傷を受けた部位の修復が得られることにより、症状は徐々に軽減をたどるとされています。

もっとも事故当日は身体に痛みがなく、特に不調が感じられなくても、数日経って痛みが出てくるケースも多いといわれていますので、事故直後に身体の不調が特にない場合であっても、当日もしくは近いうちに病院に行き、医師の診察と治療を受けておくべきです。こうしておかないと、後の正当な治療費や慰謝料等の請求に支障を来すおそれが出てきます。

この最初の通院は、整骨院ではなく、整形外科に通院しなければなりません。なぜなら上記のように、傷害の治療や診断が医師のみだからです。

整形外科と整骨院の使い分け

上記の理由により、交通事故の治療においては、整骨院よりも整形外科を優先するのが原則です。

もっとも、時間の都合等で、整骨院に通いたいという場合もあると思います。

そのような場合、最初の整形外科に通院した後で、主治医や相手方保険会社の許可があれば、整骨院へ通院するのも良いでしょう。ただし、整骨院のみに通院するのであるのではなく、最低でも月に数回は整形外科へも通院して併用するようにして下さい。

また、整骨院への治療期間は一般的に整形外科への治療期間に比べて短期間の認定になりやすいのでそれも知っておくべきです。

交通事故で受傷し、整形外科と整骨院のどちらに通うべきかお迷いの方は、是非当事務所にご相談ください。

代表弁護士 津田岳宏(つだたかひろ)/昭和54年生/京都女子大学付属小学校卒業/東大寺学園中・高等学校卒業/京都大学経済学部卒業/平成19年9月弁護士登録/平成26年6月京都グリーン法律事務所を設立

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