交通事故で股関節脱臼・骨折した場合の後遺障害と等級認定

代表弁護士 津田 岳宏 (つだ たかひろ)

交通事故で股関節脱臼・骨折の怪我をした場合、症状固定後においても、いろいろな症状が残ってしまうことがあります。

では、股関節脱臼・骨折の場合、後遺障害とその等級認定はどうなるのでしょうか。

その後遺障害としては、変形障害、機能障害、短縮障害、神経障害が考えられ、変形障害では12級5号、機能障害では8級7号、10級11号、12級7号、短縮障害では8級5号、10級8号、13級8号、神経障害では12級13号、14級9号の認定の可能性があります。

以下においては、上記4つの後遺障害とその等級認定はどうなるのかについて、順次、説明することとします。

股関節脱臼・骨折の内容等

股関節は、下肢の3大関節の1つで、ソケット型をしている寛骨臼とボール状の大腿骨頭からなる球関節です。脱臼には「前方脱臼」「後方脱臼」「中心性脱臼(寛骨臼骨折)」があり、後方脱臼が多いとされています。

骨折は、股関節を構成している大腿骨骨折(大腿骨頸部骨折、大腿骨転子部骨折、大腿骨骨幹部骨折)をいいます。

股関節脱臼・骨折の原因

股関節脱臼・骨折は、自動車の運転者や助手席の同乗者が、交通事故により強い衝撃を受けた際、膝がダッシュボードに打ち付けられて発症するケースが多いのです。

股関節の可動域制限

運動

股関節の主要運動(日常の動作にとって最も重要な動き)は、屈曲(膝を腹部側に曲げる動き)・伸展(大腿を背中側に反らす動き)と外転(足を外側に開く動き)・内転(足を内側に閉じる動き)です。

参考運動(日常の動作で主要運動ほど重要でない動き)は、外旋((膝を曲げて大腿を外側に捻る動き)・内旋(膝を曲げて大腿を内側に捻る動き)です。

測定方法

可動域は、医師が、定められた測定要領に従い、角度計を使用して、5度刻みで測定します。

原則として健側(障害のない側)の可動域と患側(障害のある側)の可動域とを比較して、評価しますが、健側にも障害がある場合は参考可動域角度(正常値)との比較となります。

股関節の可動域は、他動値(医師が手を添えて曲げた角度)で主要運動を測定します。屈曲・伸展、外転・内転及び外旋・内旋は、それぞれ一つの運動と考え、両方の合計値をもって評価します。

股関節の主要運動・参考運動と参考可動域角度(正常値)は、次のとおりです。

股関節の可動域
主要運動 参考運動
運動方向 屈曲 伸展 外転 内転 外旋 内旋
参考可動域角度(正常値) 125° 15° 45° 20° 45° 45°

後遺障害とその等級認定

股関節脱臼・骨折の場合、後遺障害としては、下記のとおり、変形障害、機能障害、短縮障害、神経障害が考えられ、その程度によって、それぞれの等級が認定される可能性があります。

変形障害

変形障害とは、骨盤骨に外部から見て分かる程度の変形を残してしまう障害のことをいいます。

等級 後遺障害
12級5号 骨盤骨に著しい変形を残すもの

「著しい変形」とは、裸体になったときに、変形が明らかに分かる程度のものをいいます。X線写真によって、初めてその変形が分かる程度であれば、後遺障害には該当しません。

機能障害

機能障害とは、股関節が強直したり、股関節の可動域が制限されてしまう障害のことをいいます。

等級 後遺障害
8級7号 一下肢の3大関節の中の1関節の用を廃したもの
10級11号 一下肢の3大関節の中の1関節の機能に著しい障害を残すもの
12級7号 一下肢の3大関節の中の1関節の機能に障害を残すもの

股関節脱臼・骨折の場合、可動域の制限の程度によって、後遺障害の8級7号、10級11号、12級7号に認定される可能性があります。

8級7号

「関節の用を廃したもの」とは、次の①ないし➂のいずれかに該当するものをいいます。

①患側の主要運動の全てが全く可動しないか、又は患側の主要運動の全ての可動域が健側の可動域角度の10%程度以下(5度単位で切り上げて計算)に制限されているもの

➁自動では患側の主要運動の全てが全く可動しないか、又は他動では患側の主要運動の全てが可動するものの、自動では患側の主要運動の全ての可動域が健側の可動域角度の10%程度以下(5度単位で切り上げて計算)となったもの

➂人工関節や人工骨頭を挿入置換した患側の主要運動の全ての可動域が、健側の可動域角度の1/2以下に制限されているもの

10級11号

「関節の機能に著しい障害を残すもの」とは、次の①ないし➁のいずれかに該当するものをいいます。

①患側の主要運動のいずれか一方の可動域が、健側の可動域角度の1/2以下に制限されているもの

➁人工関節や人工骨頭を挿入置換したもの

12級7号

「関節の機能に障害を残すもの」とは、患側の主要運動のいずれか一方の可動域が、健側の可動域角度の3/4以下に制限されているものをいいます。

なお、患側の主要運動のいずれか一方の可動域が、健側の可動域角度の1/2又は3/4をわずかに上回る場合、患側の参考運動のいずれか一方の可動域が、健側の可動域角度の1/2以下又は3/4以下に制限されていれば、10級11号又は12級7号に認定される可能性があります。

この「わずかに上回る」とは、10級11号では10度、12級7号では5度までをいいます。

短縮障害

短縮障害とは、脱臼・骨折後に足が短くなってしまう障害のことをいいます。

等級 後遺障害
8級5号 一下肢を5センチメートル以上短縮したもの
10級8号 一下肢を3センチメートル以上短縮したもの
13級8号 一下肢を1センチメートル以上短縮したもの

股関節脱臼・骨折の際、そのつき方などによって、患側の足が短くなってしまうことがあります。

神経障害

神経障害とは、脱臼・骨折部位に痛みが残ってしまう障害のことをいいます。

等級 後遺障害
12級13号 局部に頑固な神経症状を残すもの
14級9号 局部に神経症状を残すもの

被害者の自覚症状が、他覚的所見(X線・MRIなどの画像や神経学的検査)によって医学的に証明できる場合には12級13号に、被害者の自覚症状が医学的に説明できる場合には14級9号に認定される可能性があります。

X線やMRなどの画像による他覚的所見があれば、12級13号の認定を受けられる可能性がありますが、自覚症状しかない場合に14級9号の認定を受けるためには、事故の規模・態様、治療経過などから症状の一貫性、連続性が認められる必要があります。

まとめ

交通事故で股関節脱臼・骨折の怪我をし、後遺症が残った場合、その後遺障害としては「変形障害」「機能障害」「短縮障害」「神経障害」が考えられます。

変形障害では12級5号、機能障害では8級7号、10級11号、12級7号、短縮障害では8級5号、10級8号、13級8号、神経障害では12級13号、14級9号の認定の可能性があります。

交通事故で股関節脱臼・骨折の怪我をした方は、適切な後遺障害等級認定を受けるためにも、是非、当事務所にご相談ください。

代表弁護士 津田岳宏(つだたかひろ)/昭和54年生/京都女子大学付属小学校卒業/東大寺学園中・高等学校卒業/京都大学経済学部卒業/平成19年9月弁護士登録/平成26年6月京都グリーン法律事務所を設立

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