休業損害の職業別(主婦・サラリーマン・自営業者)計算方法
交通事故が原因で治療や療養が必要な場合、仕事を休まなければならなかったり、早退しなければならなかったりします。となれば、本来得られたはずの収入は得られなくなります。
こうして被った不利益は、加害者に対して「休業損害」として請求が可能です。
それでは、休業損害はどのように計算することになっているのでしょうか。
今回は、サラリーマン、主婦、自営業者の休業損害の計算方法についてご説明します。
サラリーマンの休業損害
サラリーマンの休業損害は、給料に基づいて計算されます。
まず、事故前3ヵ月の総支給額を90日で割ります。ここで出た数字を1日あたりの基礎収入とし、休業にかかった日数をかけることで休業損害が算出されます。
なお、休業時に有給休暇を使用していた場合であっても、休業損害が減らされてしまうことはありません。なぜなら、交通事故に遭っていなければ有給休暇も使ってはいなかったのです。
また、休業が理由でボーナスが支払われなかったり、減額されたりといった場合や、すでに予定されていた昇給に悪影響が出た場合も、休業損害の一部として請求できます。
ただし、役員報酬のような実際の労働とは関係がない支払いについては、休業による減収が想定されないので休業損害として認めらません。
主婦の休業損害
主婦にはサラリーマンと違って給料はありません。
主婦の労働は簡単に数値化はできませんが、自賠責基準(※)では1日あたりの基礎収入を6100円としています。(※自賠責保険の支払基準が改正され、令和2年4月1日以降に発生した休業損害については、新基準が適用されます。令和2年4月1日以前に発生した休業損害については、1日につき原則5700円です)
この金額に休業した日数(通院日数で計算されことが多い)をかけて休業損害を算出するのが自賠責基準での主婦休業損害の計算方法です。
弁護士基準では、賃金センサスを基準に主婦の休業損害を計算します。
計算方法としては、女子全年齢平均賃金の年収を365日で割った金額を1日あたりの基礎収入とし、ここに休業にかかった日数をかけることで休業損害を算出します。
ただ、主婦業がすべて制限されていなかった場合は、ここに制限されたパーセンテージをかけることになるため注意が必要です。
たとえば、対象期間が2ヵ月である場合に1ヶ月間は入院し、次の月からは怪我や通院などの影響で主婦業が50%制限されたとなれば、1ヶ月分の休業損害+1ヶ月分の休業損害の50%の合計額を休業損害として請求できます。
主婦でも休業損害が払われるというのは、一般の方では知らない方も多いです。そして保険会社が親切に教えてくれるような場合は少ないです。
当事務所は、賃金センサスを用いた弁護士基準で主婦の休業損害を請求します。主婦の休業損害が増額されることも弁護士を依頼することによるメリットのひとつです。
なおパートやアルバイトをしている主婦であっても、パート等での収入が高額でなく主婦としての労働が相当程度認められる場合は、主婦としての休業損害が認められることが多いです。
自営業者の休業損害
自営業者の場合、原則として1日あたりの基礎収入に休業日数をかける方法で算出します。
多くの場合では確定申告書に記載された年収額を365日で割った数字を1日あたりの基礎収入とします。
自営業者の休業損害でときおり問題になるのは、現実の収入より低い金額で確定申告しているという場合です。しかしこの場合は、確定申告書に記載した金額を基礎にした休業損害しか認められません。税金を払っていない収入を賠償される損害の基礎とすることは信義則に違反するというのが裁判所の基本的な考え方です。
休業損害の請求は当事務所にご依頼を
休業損害の算出は、問題になることもしばしばあります。
とくに被害者が主婦の場合は、休業損害があること自体を知らない方も多く、知らないまま損をしている方もいらっしゃいます。
自営業者の方の場合も、確定申告書がないなどの理由で金額がうまく算定できず、交渉がまとまらないといったケースはよくあります。
当事務所では、確定申告書がなかった場合でも、代用できる証拠を用意する等して、休業損害を取得した例があります。
当事務所は、休業損害に関連した問題への対応経験も豊富ですので、お気軽にご相談下さい。