交通事故で歯が喪失又は欠損した場合の後遺障害と等級認定

代表弁護士 津田 岳宏 (つだ たかひろ)

交通事故で顔面を打ちつけ、歯を負傷する場合があります。
では、交通事故で歯が喪失又は欠損した場合、後遺障害が認定されることはあるのでしょうか。
交通事故で歯が喪失又は欠損し、一定数以上の歯に「歯科補綴を加えたもの」を、歯牙障害といいます。
歯牙障害は、歯科補綴を加えた歯の本数によって、5段階の後遺障害の等級に認定されます。
以下においては、歯牙障害の後遺障害、歯牙障害の具体的内容、歯牙障害の後遺障害の申請などを概観しながら、歯牙障害が後遺障害として認定されることについて、説明することとします。

歯牙障害の後遺障害

自賠法施行令の別表第2では、下記のような基準が定められています。

等級 後遺障害(認定基準)
10級4号 14歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
11級4号 10歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
12級3号 7歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
13級5号 5歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
14級2号 3歯以上に対し歯科補綴を加えたもの

上記のとおり、後遺障害等級は、3歯以上からとなっていますので、1歯~2歯の場合には後遺障害に該当しません。

歯牙障害の具体的内容

上記の後遺障害の内容を補足して説明します。

歯牙障害

歯牙障害とは、一定数以上の歯に「歯科補綴を加えたもの」をいいます。「歯科補綴を加えたもの」とは、現実に喪失又は著しく欠損した歯牙に対する補綴をいい、「補綴」とは、歯が喪失したり、欠損した場合に、クラウン(歯全体を覆う被せ物)や入れ歯などの人工物で補うことをいいます。そして、「現実に歯を喪失した」という場合には抜歯を含むものとされ、また、「著しく欠損した」とは、歯冠部(歯肉より露出している部分)の体積4分の3以上を欠損したものをいうとされています。

後遺障害認定の対象となる歯

後遺障害認定の対象となる歯は、一定数以上の歯に「歯科補綴を加えた」永久歯のことで、乳歯(ただし、交通事故により、乳歯を欠損し永久歯の萌出が見込めない場合は除かれます)や第三大臼歯(親知らずの歯)は後遺障害認定の対象とはなりせん。そして、交通事故前に、喪失又は著しく欠損していた歯(交通事故前に、抜歯又は著しく欠損し、既に補綴されていた歯も含まれます)についても、後遺障害認定の対象とはなりません。また、交通事故前からC4の状態(虫歯が歯根まで進行した状態)であった歯も、上記の「著しく欠損していた歯」に該当するものとされています。
ただし、交通事故により、喪失又は著しく欠損した歯については、補綴前であっても、後遺障害認定の対象として差し支えないとされています。

補綴歯数に算入されないもの

上記から、有床義歯(入れ歯)又は架橋義歯(ブリッジ)等を補綴した場合における支台冠(被せ物の土台)又は鈎の装着歯やポスト(被せ物を歯に取り付けるために作られる土台)・インレー(詰め物)を行うにとどまった歯牙は、補綴歯数に算入されません。

喪失した歯数と義歯の歯数が異なる場合

喪失した歯牙が大きいか又は歯間に隙間があったため、喪失した歯数と義歯の歯数が異なる場合は、喪失した歯数により等級が認定されます。
例えば、3歯の喪失に対して、4本の義歯を補綴した場合は、喪失した3歯を補綴したものとして取り扱われます。

歯牙障害の加重障害

交通事故前から既に何歯かに歯科補綴を加えていたところ、交通事故に遭ってさらに何歯かの補綴を加えた結果、上位等級に該当するに至ったときは、加重障害として取り扱われます。
例えば、交通事故前から既に3歯に歯科補綴を加えていたところ、交通事故に遭ってさらに2歯の補綴を加えた結果、上位等級に該当するに至ったときは(合計5歯となって、13級5号に該当することになります)、加重障害として取り扱われ、上位等級(13級)から既存の等級(14級)を控除した範囲で賠償の対象が認定されることになります。

記入欄 記入方法
事故前 今回の事故前に、喪失又は歯冠部の大部分(歯冠部体積の4分の3以上)を欠損していた歯(補綴済みの歯、C4の状態の歯も含まれます)を記入
事故後 補綴前 今回の事故により、喪失又は歯冠部の大部分(歯冠部体積の4分の3以上)を欠損した歯(乳歯の損傷は原則として記入の必要はありません)を記入
補綴後 今回の事故による歯の治療の必要上、抜歯又は歯冠部の大部分(歯冠部体積の4分の3以上)を切除し、歯科補綴を施した歯を記入

なお、3つの記入欄には、同じ歯を重複して記入しないように注意する必要があるとされています。

まとめ

交通事故で歯が喪失又は欠損し、一定数以上の歯に「歯科補綴を加えたもの」を、歯牙障害といいます。
歯牙障害は、歯科補綴を加えた歯の本数によって、5段階の後遺障害の等級に認定されます。
そのため、歯牙障害において、適正な後遺障害等級の認定を受けるためには、歯科医により、後遺障害診断書(歯科用)を作成してもらうことが重要になります。
しかし、歯科医の中で、上記診断書を作成した経験のある方はごく少数にととどまるといわれています。したがって、弁護士から歯科医に対し、同診断書の記入上の注意点を説明してもらう必要がある場合もあります。
交通事故で歯を喪失又は著しく欠損した方は、歯の後遺障害に精通している当事務所に、是非、ご相談ください。

代表弁護士 津田岳宏(つだたかひろ)/昭和54年生/京都女子大学付属小学校卒業/東大寺学園中・高等学校卒業/京都大学経済学部卒業/平成19年9月弁護士登録/平成26年6月京都グリーン法律事務所を設立

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