交通事故に遭った場合、被害者はどのような資料を集めなければならないのか

代表弁護士 津田 岳宏 (つだ たかひろ)

交通事故に遭った場合、被害者は加害者に損害賠償を請求することになります。そのためには、加害者の過失行為や損害の発生を裏付ける証拠を揃えなければなりません。

では、交通事故に遭った場合、被害者はどのような資料を集めなければならないのでしょうか。

被害者自らが容易に収集できる資料もありますが、手続が煩雑で、法律に精通している弁護士の手を借りた方が入手しやすいという資料もあります。

以下においては、事故態様の立証に必要な資料、損害の認定に必要な資料を中心に、順次、説明することとします。

交通事故証明書

交通事故証明書は、自動車安全運転センターに対して交付申請を行って取得します。申請書は、センター事務所窓口のほか、交番でも入手することができます。

交付申請は、申請書に必要事項を記載の上、手数料を添えて最寄りの自動車安全運転センターに郵送します。

交通事故証明書は、交通事故が発生したことを証明するものであって、どちらの当事者に責任があるかについて証明するものではありません。

なお、交通事故証明書は、保険会社でもすぐ取り寄せますので、保険会社から入手することも多いようです。

刑事事件の記録

刑事事件の記録は、事故態様の立証方法として、有力なものです。特に、事故態様につき争いのある場合には、刑事事件の記録を入手(閲覧・謄写)して検討することが必要です。

実況見分調書

実況見分調書を検察庁から取り寄せます。その方法は、下記のとおりとなっています。

なお、照会する際には、あらかじめ担当者に対し記録の所在の有無を確認してからした方が効率的です。

捜査中の場合

記録の開示には応じないようです。

物損事故の場合

通常、警察官は、実況見分調書を作成せず、簡単な図面(物件事故報告書)のみを作成しています。

その図面については、管轄の警察署に対して弁護士法23条の2による照会をするか、訴訟提起後に文書送付嘱託の申立て(民訴法226条)をして、取り寄せることになります。

不起訴の場合

人身事故であったが不起訴となった場合には、記録は検察庁にありますので、検察庁に弁護士法23条の2に基づいて照会するか、交通事故が係属している民事裁判所に対し文書送付嘱託の申出をすることになります。

なお、検察庁では、従来から交通事故に関する実況見分調書等の証拠について、弁護士照会や裁判所からの送付嘱託に応じてきています。

事件が刑事裁判所に係属中の場合

刑事事件が係属する刑事裁判所に対し、犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律(以下「犯罪被害者保護法」といいます)3条による閲覧・謄写申請をするか、交通事件が係属している民事裁判所に対し文書送付嘱託の申出をすることになります。

犯罪被害者保護法3条は、第1回の公判期日後当該被告事件の終結までの間において、被害者やその代理人等から、当該被告事件の訴訟記録の閲覧又は謄写の申出があるときは、原則として、閲覧又は謄写を認めることとなっています。

刑事事件確定後の場合

刑事事件が確定後、記録は検察庁にありますので、検察庁に対し刑訴法53条による閲覧申請、弁護士法23条の2による弁護士照会、又は交通事件が係属している民事裁判所に対し文書送付嘱託の申出をすることが考えられます。

供述調書

事件が刑事裁判所に係属中の場合や刑事事件確定後の場合

供述調書については、前記実況見分調書の場合と同様です。

不起訴の場合

不起訴記録については、民事裁判所に対し供述調書等の文書送付嘱託をすることは可能ですが、その場合採用されても、検察庁は、平成20年11月19日付け法務省刑事局長依命通達(法務省刑総1595)により、不起訴事件記録中の特定の者の供述調書については原則として開示されませんが、次の要件を全て満たす場合には、開示するのが相当であるとしています。

①民事裁判所から、不起訴事件記録中の特定の者の供述調書について文書送付嘱託がなされた場合であること

➁当該供述調書の内容が、当該民事訴訟の結論を左右する重要な争点に関するものであって、かつ、その争点に関するほぼ唯一の証拠であるなど、その証明に欠くことができない場合であること

➂供述者が死亡、所在不明、心身の故障若しくは深刻な記憶喪失等により、民事訴訟においてその供述を顕出することができない場合であること、又は当該供述調書の内容が供述者の民事裁判所における証言内容と実質的に相反する場合であること

④当該供述調書を開示することによって、捜査・公判への具体的な支障又は関係者の生命・身体の安全を侵害するおそれがなく、かつ、関係者の名誉・プライバシーを侵害するおそれがあるとは認められない場合であること

を要件としています。なお、目撃者の特定のための情報の提供を求められた場合についても、一定の要件を全て満たす場合には、氏名及び連絡先を民事裁判所に回答するのが相当であるとしています。

ドライブレコーダーの映像

ドライブレコーダーの映像は、急激な速度変化など一定の条件を満たせば、直ちに自動保存される仕組みになっています。映像が上書きされてしまわないよう、保存しておきましょう。

防犯カメラの映像

防犯カメラの管理者に対し、任意に映像を開示してもらえるかを問い合わせます。それが難しいということであれば、弁護士法23条の2による弁護士照会により入手することを検討します(もっとも、早期に上書きされるようですので、必要性が分かった場合には、できるだけ早く交渉して保存してもらえるよう依頼する必要があります)。

信号機表示周期表等

信号機表示周期表(事故時の信号サイクル表)又はその捜査報告書等については、警察署に対し、その必要性を明らかにして、弁護士法23条の2による弁護士照会や調査嘱託(民訴法186条)の申出により、入手することができます。

なお、信号機表示周期表が刑事記録にない場合でも、所轄警察署にある場合もあります。

損害算定の資料

治療費、入院雑費、傷害慰謝料等

診断書、診療報酬明細書

通院交通費

領収書、通院交通費明細書

休業損害

休業明細書、源泉徴収票、納税証明書、課税証明書、確定申告書の控え

後遺障害に関する損害

後遺障害診断書、後遺障害等級認定票

修理費等

領収書、修理明細書、事故車両の写真、修理部分の写真、修理費見積書

代車料

領収書

まとめ

交通事故に遭った場合、被害者は、加害者の過失行為や損害の発生を裏付ける証拠を揃えた上、加害者に対して損害賠償の請求をすることになります。

そのような証拠の中には、交通事故に精通している弁護士の手を借りた方が入手しやすいという資料もあります。

交通事故に遭われ、加害者との法的解決をお考えの方は、是非当事務所にご相談ください。

代表弁護士 津田岳宏(つだたかひろ)/昭和54年生/京都女子大学付属小学校卒業/東大寺学園中・高等学校卒業/京都大学経済学部卒業/平成19年9月弁護士登録/平成26年6月京都グリーン法律事務所を設立

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