日弁連の交通事故相談センターとは?示談あっ旋のメリットや手続きを解説
日本弁護士連合会が設置している「日弁連交通事故相談センター」では、交通事故に関する示談あっ旋などを受け付けています。
今回は、日弁連交通事故相談センターが実施する示談あっ旋の概要・メリット・手続きの流れをまとめました。
日弁連交通事故相談センターとは?
日弁連交通事故センターは、交通事故に関する紛争解決を行うことを目的として、日本弁護士連合会(日弁連)が設立した公益財団法人です。
交通事故に関する電話相談・面接相談を受け付けているほか、交通事故の「示談あっ旋」を行っています。
「示談あっ旋」とは、交通事故の被害者・加害者間で和解を成立させるため、日弁連交通事故センターが両者の主張を調整する、裁判外紛争処理手続(ADR)です。
交通事故の被害者は、加害者に対して損害賠償を請求できますが、金額などについて被害者・加害者の意見が食い違うケースもあります。
その場合は、日弁連交通事故センターの示談あっ旋を利用することが、有力な選択肢となります。
日弁連交通事故相談センターの示談あっ旋を利用するメリット
交通事故の損害賠償請求を行う場合、加害者(または任意保険会社)と直接交渉する方法や、訴訟を提起する方法なども考えられます。
これらの方法と比較して、日弁連交通事故センターの示談あっ旋が優れている点は、以下のとおりです。
無料で利用できる
日弁連交通事故センターの示談あっ旋を申し立てるに当たっては、費用は一切かかりません。
また、無料の事前相談についても、原則5回まで利用できます。
訴訟を提起する際には訴訟費用(裁判所に納付する手数料)がかかることと比べると、日弁連交通事故センターの示談あっ旋は、被害者にとって経済的な手続きと言えるでしょう。
客観的な立場から示談交渉を仲介してもらえる
日弁連交通事故センターの示談あっ旋では、担当の弁護士が客観的・中立の立場から、被害者・加害者間の示談交渉を仲介してくれます。
当事者同士の示談交渉が平行線をたどっている場合でも、中立・公正な担当弁護士の働きかけによって、示談交渉がまとまる方向へと進むケースも多いです。
迅速に交通事故紛争を解決できる可能性が高い
示談あっ旋期日の開催回数は、令和2年度の実績値で、平均1.73回となっています。
期間に換算すると、平均して1か月から2か月程度です。訴訟が半年から1年に及ぶケースも多いことを考慮すると、日弁連交通事故センターの示談あっ旋は、短期間で迅速に交通事故紛争を解決できるメリットがあると言えます。
審査によって結論を示してもらうこともできる
仮に示談が不成立になったとしても、加害者が以下のいずれかの共済に加入している場合には、「審査」によって結論を示してもらうことも可能です。
- 全労済(全国労働者共済生活協同組合連合会)の「マイカー共済」
- 教職員共済生協(教職員共済生活協同組合)の「自動車共済」
- JA共済連(全国共済農業協同組合連合会)の「自動車共済」
- 自治協会(全国自治協会)・町村生協(全国町村職員生活協同組合)の「自動車共済」
- 都市生協(生活協同組合全国都市職員災害共済会)の「自動車共済」
- 市有物件共済会(全国市有物件災害共済会)の「自動車共済」
- 自治労共済生協(全日本自治体労働者共済生活協同組合)の「自動車共済」
- 交協連(全国トラック交通共済協同組合連合会)の「自動車共済」
- 全自共(全国自動車共済協同組合連合会)の「自動車共済」、全自共と日火連(全日本火災共済協同組合連合会)の「自動車総合共済MAP(共同元受)」
被害者が審査結果に同意すれば、共済側はその結果を尊重することになっているため、終局的な交通事故紛争の解決が期待できます。
なお、審査手続きについても費用はかからず、完全無料で利用できます。
日弁連交通事故相談センターの示談あっ旋の手続き
日弁連交通事故センターの示談あっ旋は、以下の流れで進行します。
無料面接相談を行う
まずは日弁連交通事故センターに連絡を取り、無料の面接相談を申し込みます。無料の面接相談は最大5回まで実施され、1回の所要時間は30分程度です。
被害者は相談担当弁護士から、損害賠償の見込み額や示談の方法などについて、アドバイスを受けることができます。その際、相談担当弁護士が、示談あっ旋に適している事案かどうかを判断して、OKであれば被害者に示談あっ旋の利用を促します。
なお、弁護士を代理人に選任している場合には、面接相談のステップを省略することが可能です。
示談あっ旋を申し込む
示談あっ旋を申し込む際には、以下の書類を日弁連交通事故センターに提出します。
- 示談あっ旋申出書
- 各種事前提出書類
- 委任状(弁護士を代理人とする場合)
- 示談交渉争点整理票
- 示談あっ旋申立メモ
各種提出書類の書式については、以下のページをご参照ください。
示談あっ旋について相手方が同意する
日弁連交通事故センターの示談あっ旋を利用するためには、加害者側の同意が必要です。
もし加害者側が不同意の場合には、引き続き直接示談交渉を行う、訴訟を提起するなどの方法を選択する必要があります。
示談あっ旋の実施
示談あっ旋に加害者側が同意した場合には、示談あっ旋期日が開催されます。示談あっ旋期日には、被害者側・加害者側・あっ旋担当弁護士が出席し、示談成立に向けた調整を行います。
示談の成立・示談契約書等の作成
被害者側と加害者側が示談案に合意した場合、示談成立・交通事故紛争の解決となります。
示談成立の証として、当事者双方が示談契約書を締結するか、または免責証書に被害者側が署名捺印します。
なお、令和2年度の実績値では、示談の成立率は78.89%となっています。
示談不成立の場合は審査に移行
示談が不成立となった場合でも、前述のとおり、加害者が所定の共済に加入している場合には、審査を求めることができます。
審査手続きでは、弁護士3名によって構成される審査委員会が、損害賠償責任の有無および賠償額についての判断を行います。
審査結果につき、被害者が同意した場合は、原則として紛争解決となります。これに対して、被害者が不同意の場合には、調停・訴訟による解決へと移行します。
以上が示談あっ旋の手続の流れです。