交通事故の賠償金として入通院看護費及び入通院雑費は認められるのか

代表弁護士 津田 岳宏 (つだ たかひろ)

交通事故に遭い、怪我をして入院や通院をせざるを得なかった場合、いろいろな出費を余儀なくされます。

では、交通事故では入通院看護費及び入通院雑費は請求できるのでしょうか。

被害者が交通事故により出費を余儀なくされた入通院看護費及び入通院雑費については、加害者にこれらの損害を請求できます。

そして、実務では、ある程度統一的に処理する必要から、交通事故における損害賠償算定の基準として、自賠責基準、任意保険基準、裁判(弁護士)基準の3つがあり、諸費用についてもこの基準により算定されています。

以下においては、損害賠償額算定の3つの基準を概観した上、請求できる入通院看護費及び入通院雑費の費用内容と損害額について、上記の各算定基準にも触れながら、説明することとします。

なお、自賠責保険の支払基準が改正され、令和2年4月1日以降に発生した事故については、新基準が適用されます(下記の支払基準は新基準によっています)。

損害賠償額算定の3つの基準

損害賠償額算定の3つの基準は、下記のとおりです。

自賠責基準

自賠責基準は、自賠法に基づく自賠責保険の支払基準であり、強制加入とされており、最低限の保障をするものであって、当然ながら、額は最も低くなっています。

任意保険基準

任意保険基準は、任意保険会社が独自に定めている基準ですが、自賠責基準と裁判(弁護士)基準の中間にあり、裁判(弁護士)基準を下回るのが一般的です。

各社とも非公表ですので、下記の説明では省略しています。

裁判(弁護士)基準

裁判(弁護士)基準は、いわゆる赤い本、青本や大阪基準に基づく基準で、訴訟になった場合に見込むことができる賠償額の基準で、最も高額になります。

東京地裁はおおむね赤い本の基準に従っていると考えられます。以下の説明は赤い本によることとし、必要に応じて他の基準についても触れることとします。

入通院付添看護費

入院又は通院の付添看護費は、医師の指示があれば原則として必要性が認められ、医師の指示がなくても、症状が重篤であるとか、上肢や下肢を受傷し身体の自由がきかないなど、受傷の部位・程度等によって客観的に付添の必要性が認められる場合、被害者が年少者である場合などには、被害者本人の損害として認められます。

医療機関が基準看護(完全看護)の場合、付添の必要性について医師の指示の証明を得られないことが多いのですが、その場合でも必要性が一概に否定されるわけではありません。

実際に提供されている看護・介護の内容・程度等も含め、傷害の内容及び程度、治療状況、日常生活への支障の有無、被害者の年齢等を考慮し、近親者の情誼としての面も考慮して、付添が必要かつ相当であると評価できるときには、近親者の付添看護費が認められます。

重傷の場合や被害者が子供の場合には認められやすいといえます。

1日当たりの基準額は、近親者の付添看護の場合、入院付添で6500円(赤い本)、5500~7000円(青本)、6000円(大阪基準)、4300円(自賠責基準(※)⇒原則として12歳以下の子供に付き添った場合)、通院付添で3300円(赤い本)、3000~4000円(青本)、3000円(大阪基準)、2100円(自賠責基準⇒医師が看護の必要性を認めた場合。

※自賠責保険の支払基準が改正され、令和2年4月1日以降に発生した入院慰謝料については、新基準が適用されます。令和2年4月1日以前に発生した入院慰謝料については、1日につき4200円です。

ただし、12歳以下の子供の通院等に付き添った場合には医師の証明は要しないとしています)となっていますが、受傷の部位・程度、被害者の年齢、常時看護か随時看護かなど、具体的な付添の負担の程度により増減されます。

職業付添人を付した場合は、必要かつ相当な実費が認められます。

近親者の付添看護費は、近親者が付き添ったことによる損害を金銭で評価したものであり、現実に近親者に報酬を支払う必要はありません。

近親者の付添看護費は、付添人に生じた交通費、雑費、その他付添看護に必要な諸経費を含むものとして定めていますので、原則として付添人に生じた交通費を別途認めることはしていません。

ただし、被害者が重傷を負ったため、遠隔地に居住している近親者が、看護のために赴いた場合には、当該近親者が看護等のため被害者の許に赴くことが被害者の傷害の程度、当該近親者が看護に当たる必要性等の諸般の事情からみて、社会通念上相当である場合には、通常利用される交通機関の普通運賃の限度内において、これらの費用も損害として認められます。

なお、近親者が有職者の場合、自己の業務を休んで付き添うと、通常、休業による損害が生じることになりますが、原則として、休業による損害と近親者の付添看護費の高い方が認められています。

ただし、近親者と被害者との身分関係等からして、必ずしも当該近親者が付き添う必要はなく職業付添人で足りる場合には、休業による損害が生じても、職業付添人の報酬の範囲に限度されることになりましょう。

入通院雑費

入院雑費

入院雑費は、入院中通常支出することが想定される日用品雑貨費(寝具、衣類、洗面具、洗面具、紙おむつ、チリ紙、食器等) 、栄養補給費(牛乳、バター、栄養剤等)、通信費(電話代、切手代等)、文化費(新聞雑誌代、ラジオ・テレビ賃借料等)等を指します。

これらの諸費用は、個別に立証することは著しく煩雑であり、金額も大きくないことから、一般的に要すると考えられる金額を入院雑費として認めるのが実務であり、個別の立証を要しません。

入院雑費の基準額は、1日につき1500円(赤い本、大阪基準)、1400~1600円(青本) 、1100円(自賠責基準⇒立証資料等により1日につき1100円を超えることが明らかな場合は、必要かつ妥当な実費とするとしています)となっています。これに入院期間を乗じて算定します。

これら通常想定される支出を超えて特に必要となった雑費がある場合には、個別に必要性・相当性を判断の上で定額分のほかに認められる場合があります。

しかし、その反面、それ以上かかったことを領収書等で証明しても、特に必要があったというもの以外は認められません。

例えば、よく問題になるのは魔法瓶、電気毛布、カラーテレビなどですが、これらを購入したとしても、これらの商品は後まで使用できますので、加害者に請求することはできません(レンタル料は請求できます)。

通院雑費

通院雑費は、1日当たりいくらと決めることは難しいので、領収書によって加害者に請求することになります(自賠責基準は、必要かつ妥当な実費とするとしています)。

ここで問題になるのは、通院中にドリンク剤や精力剤を飲んだときですが、これらの費用は認められません。

まとめ

交通事故における損害賠償算定の基準としては、自賠責基準、任意保険基準、裁判(弁護士)基準の3つがあり、入通院に伴う付添看護費や雑費もこの基準により算定されています。

被害者は、入通院看護費及び入通院雑費を請求できますが、有利な賠償金を得るためには、どの基準が適用されるかによって大きな違いがあります。

交通事故に遭い、入通院付添看護費や入通院雑費の請求をお考えの方は、是非当事務所にご相談ください。

代表弁護士 津田岳宏(つだたかひろ)/昭和54年生/京都女子大学付属小学校卒業/東大寺学園中・高等学校卒業/京都大学経済学部卒業/平成19年9月弁護士登録/平成26年6月京都グリーン法律事務所を設立

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