入通院慰謝料の考え方と計算方法について
交通事故で傷害を負ってしまったら、治療費とは別に入通院慰謝料を受け取ることができます。
ここでは、入通院慰謝料の考え方と、具体的な計算方法、事案に応じた適切な金額の慰謝料を受け取るにはどうしたらよいかについて解説します。
交通事故の入通院慰謝料は精神的損害に対する賠償金
交通事故にあってしまい、怪我をした場合の精神的苦痛は大きなものです。
痛みや恐怖による苦痛だけではなく、入通院によって普段の日常生活をおくれないことや、仕事ができないことなどによる不安など、個々の事情によってさまざまな精神的苦痛を伴います。
そのため、交通事故によって傷害を負った場合には、治療費や休業損害などの他に、精神的損害として慰謝料の請求が可能です。
なお、車両の損壊などの物損についての慰謝料は、認められないことが通常です。たとえば思い入れのある愛車が壊されたときであっても、この場合は財産的損害に対する賠償によって損害は全て填補されたと判例はみなしています。
入通院慰謝料は治療期間に対する慰謝料
交通事故の入通院慰謝料は、入院・通院期間に対する慰謝料ですので、入院また通院開始後から症状固定前までの期間で計算します。
症状固定とは、これ以上治療をしても症状が回復しないと判断される時点のことであり、法律上の概念です。
弁護士基準がもっとも高い
入通院慰謝料の算出基準には、自賠責基準・任意保険基準・弁護士(裁判)基準の3つがあります。
自賠責基準の金額がもっとも低く、弁護士基準が金額のもっとも高い基準です。
自賠責基準の入通院慰謝料は4300円×治療日数で計算されます。(※自賠責保険の支払基準が改正され、令和2年4月1日以降に発生した入院慰謝料については、新基準が適用されます。令和2年4月1日以前に発生した入院慰謝料については、1日につき4200円です。)
この場合の治療日数とは、治療期間(治療を開始してから症状固定日まで)の日数と、実際に入通院した日数を2倍した日数を比べて少ないほうです。
例えば治療期間が30日で、入院が5日、通院が5日の場合、実際に入通院した日数(5日+5日=10日)の2倍が20日で治療期間の30日より短いので、20日を治療日数とします。
同じ日に2つ以上の医療機関へ通院した場合には1日とします。
また、自宅療養中であってもギプス装着期間は入通院日数に含めます。
また、必要性が認められる場合は整骨院(接骨院)での治療も入通院日数に含めます。自賠責については、傷害による損害補償金の限度額が120万円と決められており、限度額の中には慰謝料のほかに治療費や休業損害も含みます。
つまり、治療費等との合算で120万円を超えてしまった場合は、上記計算での自賠責からの慰謝料は払われなくなります。この点を誤解している方がおられますので、注意が必要です。
弁護士基準なら最高額の入通院慰謝料を受け取ることが可能
弁護士基準での入通院慰謝料は、過去の判例を基準にしています。
この基準で計算される慰謝料の金額は、自賠責基準や保険会社基準より高額になります。
最大限の慰謝料を獲得するためには弁護士に依頼
適切な慰謝料を獲得するためには、弁護士基準での慰謝料を保険会社に払わせないといけないのですが、保険会社は弁護士が介入しない案件では通常弁護士基準での慰謝料は払いません。
また、交通事故の入通院慰謝料は形式的な基準が存在しますが、具体的な金額は個々の事件によりある程度異なります。
たとえば、同じ通院期間でも通院回数が多い方が慰謝料は高額になる傾向にあります。仕事が忙しい、あるいは面倒くさい等の理由で通院回数が少なくなると、慰謝料の金額は低くなります。当事務所は、適切な慰謝料を獲得するための通院方法もアドバイスしています。
一方で、被害者が妊娠していた、加害者が飲酒運転やひき逃げをした等の場合は慰謝料は増額される傾向にあります。このような事情がある場合、当事務所は必ず保険会社に主張します。
事案に応じた最大限の慰謝料を獲得するためには、弁護士のサポートは大きな力になります。慰謝料の増額をご希望の方は、お気軽にご相談下さい。