交通事故の加害者が無保険だった場合、被害者は賠償金を得る方法はあるのか

代表弁護士 津田 岳宏 (つだ たかひろ)

交通事故に遭った場合、通常であれば、被害者は、加害者が加入している保険から賠償金を得られるものと考えることでしょう。

では、交通事故の加害者が無保険だった場合、被害者は賠償金を得る方法はあるのでしょうか。

まず、加害者が任意保険に加入していない場合には、加害者の自賠責保険に請求する、被害者の任意保険を利用する、健康保険や労災保険を利用することにより、また、加害者が自賠責保険にも加入していない場合には、被害者の任意保険を利用する、健康保険や労災保険を利用する、政府保障事業を利用する、加害者に請求することなどにより、被害者は賠償金を得るという方法が考えられます。

以下においては、加害者が任意保険に加入していない場合、加害者が自賠責保険にも加入していない場合などを概観しながら、交通事故の加害者が無保険だった場合、被害者は賠償金を得る方法はあるのかについて、説明することとします。

加害者が任意保険に加入していない場合

加害者の自賠責保険に請求

被害者は加害者の自賠責保険から補償を受けることができます
自賠責保険は被害者保護のための強制保険ですから、人身損害が対象であり、物的損害は対象となりません。

また、自賠責保険は最低限の保障をするにすぎないため、補償の上限があります。補償の上限は、自賠法16条の3により支払基準が定められており、傷害につき120万円、後遺障害につき75万円~4000万円、死亡につき3000万円です(自賠法13条1項、同法施行令2条)。

被害者の任意保険の利用

被害者が加入する任意保険に「人身傷害補償保険」、「搭乗者傷害保険」、「無保険車傷害保険」、「車両保険」が付いていれば、被害者が受けた損害のうち、自賠責保険では塡補されない部分の補償を受けることができます。

人身傷害補償保険

人身傷害補償保険は、被保険者が交通事故(自損事故や加害者不明の事故を含みます)によって身体に傷害を被った場合、被保険者の過失の有無を問わず、約款所定の基準によって積算された損害額について、人身傷害補償契約を締結した保険会社が被保険者に対し、契約保険金額の範囲内で保険金を支払うことを内容とする傷害保険です。

搭乗者傷害保険

自動車の搭乗者が事故により負傷した場合に、一定の保険金が支払われるものです。被保険者の家族でなくても、被保険自動車に乗車中の者であれば、補償されます。

無保険車傷害保険

無保険車傷害保険は、加害者が保険に無加入である場合、ひき逃げなどで加害者が誰か分からない場合などに、被害者が加害者に対して賠償請求できる額を保険金として支払うというものです。

車両保険

被保険自動車(自己の自動車)が衝突等の偶発的な事故によって被保険自動車に生じた損害に対して支払われる保険です。

健康保険の利用

交通事故で賠償責任を負う加害者がいる場合であっても、健康保険の適用があります。健康保険組合の窓口に、第三者行為による傷病届を出すことにより利用可能となります。自賠責保険の場合、傷害に関する損害の保険金額の上限が120万円と定められているため、自由診療ではすぐに上限に達してしまうおそれがあります。

しかし、健康保険(診療報酬点数が1点10円)を利用すれば、窓口負担は3割(小学生から70歳未満の場合)で済み、自由診療(同点数が1点20~30円と設定)よりも治療費を低く抑えることができますので、最終的に受け取れる金額を確保できるという効果もあります。

ただし、労災保険の適用できる交通事故については、健康保険を利用できません。

労災保険の利用

交通事故が被害者の業務遂行中又は通勤中の場合は、労災保険の適用があります。所轄の労働基準監督署に第三者行為災害届を提出すれば補償を受けられます。

労災保険と自賠責保険の両方を利用できる場合、行政通達は原則として自賠責保険の支払を先行させることとされていますが(昭41.12.16基発1305号)、強制力はなく、被害者は労災保険給付を先行して受領することもできます。ただし、同一の事由については、労災保険と自賠責保険のどちらかからしか支払を受けることができません。

労災保険は、自賠責保険に比べて補償範囲が狭いことがありますが(入院雑費や慰謝料は支給されません)、被害者に過失がある場合でも、過失相殺はされませんので、労災保険を先行させることが有利です。

また、自賠責保険では、傷害に関する損害の保険金額の上限が120万円と定められているため、自由診療ではすぐに上限に達してしまうおそれがあります。しかし、労災保険では診療報酬点数が1点12円で治療費の上限がないため、両者には大きな違いがあります。

このように、結果として労災保険の方が有利な点がありますので、利用できる場合は労災保険の利用を検討した方がよいとされます。

加害者が自賠責保険にも加入していない場合

上述した、被害者の任意保険を利用する、健康保険や労災保険を利用するほか、下記の方法が考えられます。

政府保障事業の利用

加害者が自賠責保険にも加入していない場合や、ひき逃げ事故のように加害者が判明しない場合には、被害者は政府から損害の塡補を受けることができます(自賠法72条)。

もっとも、政府の損害塡補は最終的な被害者救済措置であるため、健康保険、労災保険等の社会保険を利用できる場合は、まずそれらを先に使用すべきものとされています(同法73条1項)。政府が被害者に支払う損害の塡補額は、自賠責保険の保険金額と同額ですが(同法施行令20条1項)、健康保険等の社会保険から給付を受けるべき場合には、その給付額を控除した額が支払限度額となります。

また、無保険者による事故であっても、加害者に資力があるときは、加害者が賠償することになりますので、塡補金の支払はなされません。

加害者に請求

上記のような請求や利用で賠償金が得られない場合には、加害者に対し、直接賠償金を請求するしかありません。もちろん、加害者に財産がある場合には、法的手続を踏めば、当該財産から一定の支払を受けることできます。しかし、加害者が無保険だった場合、賠償金を得ることを期待するのは難しいといえます。

その他

加害者の使用者(雇用主)や加害車両の運行供用者(保有者・所有者等)に対して、損害賠償を請求できる場合もあります。

まとめ

交通事故に遭った際、加害者が任意保険に加入していない場合には、加害者の自賠責保険に請求する、被害者の任意保険を利用する、健康保険や労災保険を利用することにより、また、加害者が自賠責保険にも加入していない場合には、被害者の任意保険を利用する、健康保険や労災保険を利用する、政府保障事業を利用する、加害者に請求することなどにより、被害者は賠償金を得るという方法が考えられます。

加害者が無保険だった場合に、賠償金を得る方法につきお悩みの方は、是非当事務所にご相談ください。

代表弁護士 津田岳宏(つだたかひろ)/昭和54年生/京都女子大学付属小学校卒業/東大寺学園中・高等学校卒業/京都大学経済学部卒業/平成19年9月弁護士登録/平成26年6月京都グリーン法律事務所を設立

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